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たちばな台日記 〜スタッフブログ〜

小児科医より

舌下免疫療法:アレルギーの治療          たちばな台クリニック小児科 秋谷 進

1.舌下免疫療法とは?
患者さんのアレルギーの原因となっているアレルゲンを、少しずつ繰り返し投与し、体を慣らし、症状を和らげる治療法です。

①アレルギー症状を根本的に改善
アレルギー症状は、花粉やダニなどといったアレルゲン(抗原)と呼ばれる原因物質によって引き起こされます。飲み薬や点鼻薬などの対症療法は一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。しかし、舌下免疫療法では根本的な体質改善をして、治癒もしくは長期間症状の起きない寛解(かんかい)状態に導くことが期待できます。

②有効性は高い
根本的に治療できる方法ですが、すべての人に効果が期待できるわけではありません。しかし、継続して治療すると、8割前後の人で症状が改善すると言われています。

③スギ花粉症とダニアレルギーが対象
当院では、以下の2つの薬剤を使った舌下免疫療法をおこなっています。

・スギ花粉症減感作療法薬「シダキュア」
スギ花粉症の改善を期待できます。投与開始後1週間はシダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU、2週間目以降はシダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUと多い量のお薬を使います。
・ダニアレルギー減感作療法薬「ミティキュア」
ダニ(ハウスダスト)よるアレルギー性鼻炎の改善を期待できます。投与開始後1週間はミティキュアダニ舌下錠3,300JAU、投与2週目以降はミティキュアダニ舌下錠10,000JAUを使って治療します。

④治療期間と効果の発現
治療期間は、3~5年間継続を推奨しています。

効果の発現時期には個人差があり、さまざまです。初回投与から数か月後の花粉飛散期に改善していることもあれば、2~3年後に改善が見られる場合もあります。

 

2.たちばな台クリニックでの治療の流れ
当院では以下の流れで、治療をおこないます。

Step1. 初回診察:医師へ相談・舌下免疫療法の説明・アレルギー検査
Step2. 2回目診察(1週間後):検査結果報告・同意書記入・1週間処方・初回投与
Step3. 3回目診察:医師診察・増量した薬の1か月分処方
Step4. 以降は4週間ごとの受診

血液検査で、スギ花粉症またはダニアレルギーの確定診断をおこないます。

初回のお試し投与では病院に服用後30分滞在していただき、安全に服用できることを確認します。診療終了時刻の1~2時間前に受診して下さい。

 

 

3.治療開始時期と服用手順
①治療開始時期
スギ花粉舌下錠は、6月から11月に治療を開始するのが最適です。スギ花粉飛散時期の前後12月から5月は、患者さんのスギ花粉アレルゲンに対する過敏性が高まっている場合が多いので、治療には適していません。
ダニアレルギーの舌下錠は、1年中いつでも始められます。

②服用手順
舌の下に錠剤を 1 分間保持した後、飲み込みます。錠剤を舌の下に置くと唾液で溶けてなくなりますが、薬の溶けた唾液はすぐに飲み込まず、1 分間舌の下に保持してください。飲み込んだ後、5 分間はうがいや飲食を控えるようにします。

舌下錠は、有効成分が舌の裏の粘膜から直接血管に吸収される薬です。口から飲むのと異なり、小腸や肝臓などで分解されずに効果が出るため、体内に作用するまでの時間が早くなります。

また、服用前と服用後2時間は、激しい運動・飲酒・入浴などは避けてください。重篤なアレルギー症状であるアナフィラキシーなどの副作用があらわれる場合があります。

 

4.服用するときに特に注意が必要な方
次の病気の方や以下のお薬を飲んでいる方は、必ず医師にお伝えください。また、飲んでいるお薬の種類が分からない場合も医師に伝えてください。

①既往症(かかったことのある病気)
・アレルゲンエキスによる診断・治療を受けたことがある方、スギ花粉を含む食品を食べてアレルギー症状をおこしたことのある方
・気管支喘息の方
・悪性腫瘍、または免疫系に影響を及ぼす全身性疾患(自己免疫疾患、免疫不全症など)をお持ちの方
・重度の心疾患、肺疾患、高血圧症の方

②併用薬(すでに飲んでいるお薬)
・他の減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬
・非選択的β遮断薬(高血圧、狭心症、不整脈などの治療薬)
・三環系抗うつ薬およびモノアミンオキシダーゼ阻害薬(遺尿症、うつ病、パーキンソン病などの治療薬)
・経口または注射のステロイド製剤

 

5.副作用・注意事項
①主な副作用
主な副作用は、以下のとおりです。

・口の中のかゆみ
・口の中の不快感
・喉のかゆみ
・耳のかゆみ
・皮膚のかゆみ
・鼻漏(びろう、喉に鼻水が流れる)
・眼のかゆみ

飲み始めの1か月頃までに副作用の発現(主に口腔内の症状)が多く見られるので、注意してください。

②注意事項
・治療の対象者は5歳以上です。
・高齢の方(65歳以上)は十分な治療効果が得られない可能性や、副作用がより重篤となるおそれがありますので、治療の可否について医師と相談してください。
・アナフィラキシーの症状に対処できるよう、できるだけ家族の方がいる場所や日中に使用してください。
・症状が改善しても、自己判断で中止しないようにしてください。
・他の医療機関を受診するときや、他の薬を購入するときには、必ず舌下免疫療法を受けていることを伝えてください。
・喘息発作時や気管支喘息の症状が激しい場合、急性感染症にかかっているときや体調が悪い場合、抜歯後や口内炎など口の中に傷や炎症がある場合は、薬を使用せずに、医師または薬剤師に相談してください。

 

たちばな台クリニック小児科では舌下免疫療法を行っています。

どうぞお気軽にご相談ください。

 

2025年04月21日 たちばな台クリニック小児科 秋谷 進 

 

参考文献:

添付文書「シダキュア」

添付文書「ミティキュア」

患者向き医薬品ガイド「シダキュア スギ花粉舌下錠」

日本アレルギー学会「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)」

鳥居薬品「シダキュアよくあるご質問」

子どもの近視は1日1時間のスクリーンタイムでも進む可能性  スクリーンタイムと近視の関係

 パソコン、スマートフォンやタブレット端末が広く普及し、子どもの頃からこれらのデジタルスクリーンを見ているという人が多くなっています。そんな時代に気になるのが「近視」です。
スクリーンを長く見ていると近視になるというイメージは皆さんお持ちだと思いますが、実際にデジタルスクリーンを見ている時間と近視の関係についてよく知っているという人はなかなかいないかもしれません。
 今回はデジタルスクリーンの使用時間と近視の関係について調べた研究をまとめた論文について紹介します。

タイトル: Ahnul Ha ,Yun Jeong Lee,Marvin Lee,et al.Digital Screen Time and Myopia: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis.JAMA Netw Open. 2025 Feb 3;8(2):e2460026. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.60026.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39982728/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11846013/

 ソウル国立大校医学部眼科学のYoung Kook Kim氏らは1日当たりのスクリーンタイムが1時間増えるごとに近視になるリスクが高まり、近視になる傾向が21%上昇する可能性を報告しました。詳細は「JAMA Network Open」2025年2月21日に掲載されました。

■研究の方法
 この研究はこれまでに行われた、デジタルスクリーン使用時間と近視リスクの関係についての研究論文を集めてそれらを解析する手法で行われました。対象はデジタルスクリーン機器(スマートフォン、タブレット、ゲーム機、コンピュータ、テレビ)の使用時間と近視関連の関係を調査した一次研究の論文が選ばれました。

■研究の結果
 対象になった論文の数は45でした。それらの研究の対象者を合わせた3,355,241人が解析の対象となりました。(平均年齢9.3±4.3歳)
解析したところ以下のことが判明しました。
 1日にデジタルスクリーンの使用時間が1時間増えるごとに近視のリスクは上昇しました。しかし、1日1時間までのスクリーン時間では近視との関連は見られませんでした。
 つまりデジタルスクリーンの使用時間1時間以下では近視のリスクにはならず、それ以上になると1時間増えるごとに近視のリスクが明らかに上昇するということがわかったのです。
 子どもの近視を予防するためには可能であれば画面を見る時間は1日1時間以内にしましょう。どうしても1時間を超えてしまうという場合でもできるだけ短くすれば近視のリスクを下げることができます。

■小児科医から
 今回はデジタルスクリーンの利用時間と近視リスクの関係についての研究を紹介しました。研究結果をみると「ゲームは1日1時間」は科学的に根拠のある理論なのかもしれません。
 しかし、タブレット端末が配布され、書き取りの宿題等がタブレット提出の学校もあります。子どもの頃からさまざまなデジタルスクリーンを使用しないといけない時代ですから、必要のない時にはできる限り使用せずに過ごすようにしましょう。


2025年4月8日
たちばな台クリニック小児科 秋谷    進         

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