2023年06月
ここから始める! ”不眠症”に対する漢方薬3選
院長の山嵜です。
5月16日に開催されました「WEBで伝える漢方 ~明日から使える漢方の使い分け~」という講演会で
「ここから始める! ”不眠症”に対する漢方薬3選」というテーマでお話を致しました。
10歳以上の日本人の平均睡眠時間は7時間54分で、世界最短レベルの睡眠時間として知られています。
さらに日中の生活に支障をきたす睡眠困難が3カ月以上持続する「慢性不眠症」は国民の10%とも言われています。
不眠症には生活習慣や睡眠習慣の改善が最も重要な対策とされておりますが、それでも持続する際には薬物治療も検討されます。
現在使用されている睡眠薬は大きく3つに分類されます
❶ GABA-A受容体作動薬
❷ オレキシン受容体拮抗薬
❸ メラトニン受容体作動薬
20~74歳の一般人口におけるこれらの薬剤処方率は4.7%とされておりますが、アンケート調査によりますと睡眠薬内服中の患者様の4分の3は出来ることなら減量・中止を希望しているとの回答でした。
不眠症に対して初めから睡眠薬を使用しないで治療をすることが出来ないか?また現在内服している睡眠薬を減量中止していくことが出来ないか?
そんな時に私たちが持っておきたい一手が漢方薬の使用です。
本講演では3つの代表的な漢方薬を御紹介させて頂きました。
❶ 「疲れきっているのに眠れません」
体力が低下したそんな方には・・・
❷ 「イライラしてしまって眠れません」
興奮しやすく怒りっぽい、そんな方には・・・
❸ 「ストレスや不安で過敏になって眠れません。動悸もします。」
体力はあるが、ストレスで神経過敏になっている、そんな方には・・・
睡眠の質を高める漢方薬はたくさんありますが、それぞれの患者様の特徴をよく理解し、全身の所見を注意深く診察する事で、西洋薬とは異なる効果が期待できます。
不眠症でお悩みの方や、睡眠薬を使用しているが出来れば減量したいと考えている方はぜひ漢方薬もお試していただければと思いますので、当院までお気軽にご相談ください。
第120回 日本内科学会総会
院長の山嵜です。
少し前の話になりますが、2023年4月14日から4月16日まで東京国際フォーラムで開催されました
第120回日本内科学会総会・講演会で発表の機会をいただきました。
今回は
「コントロール不良高血圧患者に対するサクビトリルバルサルタンの有用性」
というテーマでの発表です。
現在日本には約4300万人の高血圧患者が存在すると言われておりますが、高血圧治療を受けている方のなかで目標血圧を達成できている患者様は約3割程度とされているのが現状です。
サクビトリルバルサルタンはネプリライシン阻害作用を有するサクビトリルとアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬であるバルサルタンの複合体で、レニンアンジオテンシンアルドステロン系の阻害とナトリウム利尿ペプチド系の増強という二つの効果を併せ持つ薬剤です。慢性心不全に対して使用されていたサクビトリルバルサルタンはその強力な降圧作用から高血圧診療に対しても非常に期待されています。
そこでアジルサルタンからサクビトリルバルサルタンに変更を行った際の血圧の変化について検討を行いました。
試験デザインの詳細は控えさせていただきますが、主要評価項目であります収縮期血圧・拡張期血圧・脈圧はいずれも有意な低下を認め、サクビトリルバルサルタンの有効性が示されました。
日本人に多く見られる食塩感受性高血圧に対してもNa利尿をはじめとする多彩な作用を有する事からその有効性が認められるサクビトリルバルサルタンですが、既存の降圧薬で目標未達成の高血圧患者様に対しても強力な一手となることが期待されます。