横浜市青葉区 循環器内科 小児科 皮膚科 禁煙外来 睡眠時無呼吸症候群 地域医療を支えるクリニックです

MENU

たちばな台日記 〜スタッフブログ〜

EPAの歴史と新たな可能性

院長の山嵜です。

 

先日「横浜脂肪酸・胆汁酸フォーラム」に講師としてお招き頂きました。

そこで

脂肪酸製剤の可能性を見つめる ~高純度EPA製剤の歴史から新たな知見まで~

というテーマで講演をさせて頂きました。

 

EPAはω3系脂肪酸に属する脂肪酸で、皆さんもご存知の通り魚にたくさん含まれる油です。

EPAの歴史は古く、注目されはじめた時期はなんと1970年代まで遡ります。

 

 

 

そこで講演した内容をふまえて、本日当院で開催した健康教室のタイトルは

 

知りたい!コレステロールのいい話 ~いい油を摂取して健康な一年を~です。

 

EPAが注目されたのはイヌイットの疫学調査を行ったところ、デンマーク人と比較して心疾患による死亡率が低いという発見からでした。

両者の食事内容を比較すると摂取している脂肪量は変わらないものの、イヌイットは魚やアザラシから、デンマーク人はブタや牛から脂肪を摂取していたのです。血液検査上全脂肪酸におけるEPAの占める割合はイヌイットで26.5%、デンマーク人で0.2%でした。

 

日本人約4万人を対象に行われた調査でも、魚(ω3系脂肪酸)を多く摂取している群では少ない群に比べて有意に心筋梗塞の発症率が減少していることが明らかになりました。

 

EPAには多くの薬効が証明されています。

❶ 血清脂質低下作用

❷ 抗血小板作用

❸ 動脈の伸展保持作用

❹ 抗炎症作用

ω6系脂肪酸に属するアラキドン酸は炎症性メディエーターを産生し炎症を惹起することが分かっています。それに対して抗炎症作用を発揮するのがEPAです。

この事から血中のEPA/アラキドン酸比は動脈硬化や心血管イベントの予測因子となってきます。

 

EPAが動脈硬化の高リスク患者や冠疾患既往患者において一次予防・二次予防ともに有用であることは日本で行われたJELIS試験で明らかなになりました。

しかし、Alpha-Omega試験では心筋梗塞発症後の患者においてEPAが有用でないとのデータが示されました。

どうしてでしょうか?

その一つの理由として投与されたEPA量が226mg/日と非常に低用量だったことが考えられます。

JELIS試験で投与されたEPAは1,800mg/日です。

 

そこで今年1月にReduce-it試験というEPA 4,000mg/日の試験結果が論文掲載されました。

その結果心血管疾患高リスク症例において、イベントを25%も抑制することが出来たのです。

 

以上の結果より

「心血管疾患の高リスク症例では、高用量のEPAが心血管イベント抑制に有効である」

という事が明らかになりました。

 

EPAのサプリメントはたくさん販売されておりますが、EPAの含有量は残念ながら不十分なものがほとんどであるのが現状です。

コレステロールが高く、その他生活習慣病をお持ちの方や以前に心疾患を罹患された方は、純度が高く高用量EPAを含有する医薬品を選択されると良いと思います。

 

また、高リスクでない方はサプリメントやお薬よりも毎日の食事でなるべく魚を摂取していただく事をお勧めいたします。

 

 

油の話はまだまだつきません。

 

またの機会にその他の油のお話もさせて頂きたいと思います。

;