ARNI National Symposium 心不全超早期ステージにおけるエンレストの可能性
院長の山嵜です。
少し前になりますが10月28日のARNI National Symposiumで講演をさせて頂きました。
今回のテーマは「心不全超早期ステージにおけるエンレストの可能性」です。
心不全は
ステージA:高血圧や糖尿病などの心不全のリスクとなる疾患を有するリスクステージ
ステージB:器質的心疾患を有するリスクステージ
ステージC:症状を有する心不全もしくは心不全の既往を有する心不全ステージ
ステージD:治療抵抗性の重症心不全ステージ
の4ステージに分類されます。
心不全のリスクステージ別生存率ではステージBとCの間で生命予後に大きな差があり、心不全を発症する以前に介入をすることが非常に重要であることが示唆されます。
高血圧症は最も罹患患者の多い疾患であり、心不全のリスク因子であることが知られています。
また高血圧患者に降圧療法を行った48の臨床試験のメタ解析では、収縮期血圧を5mmHg低下させると心不全の発症を13%減少させることが出来ることが報告されています(Lancet 2021; 397: 1625–36)。
2021年9月より心不全治療薬であるARNI サクビトリルバルサルタン(エンレストⓇ)が「高血圧症」の適応を取得しました。
こちらはサクビトリルバルサルタンの国内第Ⅲ相臨床試験で、ARBであるオルメサルタン20mgとサクビトリルバルサルタン400mg投与患者における24時間収縮期血圧の推移を表したグラフです。
オルメサルタン群に比べてサクビトリルバルサルタンでは日中活動時の血圧および夜間血圧を良好に低下させることが出来ています。
日中血圧の低下は交感神経活動の抑制、夜間血圧の低下はナトリウム利尿に伴うサクビトリルバルサルタンの効果ではないかと考えております。
またサクビトリルバルサルタンではオルメサルタンに比べて左室心筋重量係数を有意に低下させました。
高血圧患者における左室肥大の存在は心不全発症のリスク因子であり、治療による左室肥大の退縮は心血管イベントの発生を減少させることが知られています。
以上より高血圧に対する超早期ステージからの適切な治療介入は心不全発症を抑制し、患者様の予後を改善させる可能性があり、確実な降圧効果と左室肥大抑制効果を有するサクビトリルバルサルタンには大きな期待が持てるのではないかと考えております。
日々寒くなり血圧も上昇しやすい時期ですが、高血圧が気になる方、また降圧薬を内服しているがなかなか十分なコントロールが得られない方はいつでも当院までお気軽にご相談下さい。