心不全患者における高カリウム血症管理
院長の山嵜です。
本日は「Cardiorenal Conference ~心腎について考える~」の会に参加してまいりました。
近年心不全治療は新薬が次々と登場し、目覚ましい発展を遂げています。
下は急性・慢性心不全診療ガイドラインフォーカスアップデート版に記載されている心不全治療アルゴリズムです。
EF<40%と左室収縮能の低下したHFrEF患者における基本薬は
・ACE阻害薬/ARB
・β遮断薬
・MRA
の3剤となっております。
海外のガイドラインではACE阻害薬/ARBよりもARNIを推奨しているものもあり、またそれにSGLT2阻害薬を加えた4剤を「Fantastic Four」と称しなるべく早期にこの4剤を投与することが予後を改善させるという報告もあります。
このような治療戦略により心不全の予後改善が期待されるわけですが、ACE阻害薬、ARB、MRAのいずれも血清カリウム値を上昇させる可能性があることから、心不全治療における高カリウム血症が問題視されるようになってきました。
心不全における高カリウム血症の要因は大きく3つ。
高カリウム血症患者は予後不良であることが知られていますが、特に高カリウム合併心不全では死亡率が上昇する事が報告されています(Am J Nephrol. 2017; 46: 213-221)。
高カリウム血症でなぜ心不全の予後が不良になるのか?
その原因は高カリウム血症自体ではなく、高カリウム血症が存在する事でRAAS阻害薬やMRAを中止してしまうことにあるという事が報告されています。
そこでRAAS阻害薬やMRAを使用する心不全患者の高カリウム闕所に対しては薬剤を減量・中止するのではなく、カリウムバインダーを使用し血清カリウム値をコントロールした上で薬剤を継続する事が推奨されるようになりました(JACC 2020; 75(22): 2836-50)。
これまでのカリウムバインダーはざらつきがあり非常に飲みにくく、ポリマー製剤であるため便秘などの副作用が多いことが問題となっていました。
近年使用可能となりましたロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)はカリウムとの選択性が高く、内服数時間からカリウム低下作用を示し、また非ポリマー性であるため便秘の副作用が比較的少ないことが特徴の薬剤です。
また水に溶かして飲むタイプのため飲みやすいことも内服の継続にはとても重要であると思われます。
高カリウム血症に対する新規薬剤の登場は、今後の心不全治療におけるRAAS阻害薬使用継続のキードラッグとなるかもしれません。
(山嵜 継敬)