「高尿酸血症と循環器疾患」をテーマに講演をさせて頂きました
院長の山嵜です。
今日は「高尿酸血症と循環器疾患 ~実臨床における高尿酸血症の管理~」というテーマで講演をさせて頂きました。
今では悪者扱いされる尿酸。
痛風の原因として皆さんもよくご存じかと思います。
そのためアルコール飲料でも尿酸の原因となるプリン体カットを謳った商品もたくさん見られます。
ところがこの尿酸は非常に強い抗酸化作用、つまり酸化ストレスに対抗する力を有しています。
つまり「善玉」なのです。
約3,000-3,500万年前にアスコルビン酸を合成する酵素を失った霊長類は抗酸化物質を失いました。
その後樹上生活に移行し、他の動物から襲われることなく安全に生活できるようになると日中に活動を行うようになりました。
そこで問題になってくるのが紫外線です。紫外線を浴びることは強い酸化ストレスを生み出します。アスコルビン酸を合成できなくなった霊長類が選択した新たな抗酸化物質が尿酸だったのではないかと考えられています(仮説)。
この尿酸は我々の体の中の抗酸化物質の半分以上を占めるといわれています。
ところが生活の欧米化により尿酸が過剰になってくると、今度はその性質は一変し酸化ストレスを生み出す働きをするようになりました。
つまり「悪玉」としての顔を見せるようになったのです。
酸化ストレスは動脈硬化、悪性腫瘍、パーキンソン病、認知症、そして最近では老化にも関与すると考えられています。
その影響として高尿酸血症の方では心血管イベントや心血管死亡の発症率が有意に高いことが明らかになってきました。
この高尿酸血症は大きく分けると3つに分類されます。
❶ 産生過剰型
❷ 尿酸排泄低下型
❸ 腎外排泄低下型
日本人では8-9割が尿酸排泄低下型と考えられています。
近位尿細管から分泌される尿酸が低下することで体内の尿酸が増加してしまうタイプです。
こういった病態に有効なのがURAT1阻害薬(尿酸排泄促進薬)です。
これまでの尿酸排泄促進薬は、尿酸の分泌にかかわるトランスポーターにも影響を与えてしまうことが問題でした。
2021年5月から長期処方が可能となりました「ドチヌラド」は再吸収に関係するURAT1トランスポーターにのみ強い阻害作用を有する薬剤であることから
選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI:Selective Urate Reabsorption Inhibitor)と呼ばれています。
こういった薬剤の登場により尿酸の治療も新たなステージを迎えているのかもしれません。
尿酸が高くて気になる方がいらっしゃいましたら是非当院までお気軽にご相談ください。