院長より
心房細動と睡眠時無呼吸症候群
5月15日神奈川循環器睡眠障害研究会で
「心房細動と睡眠時無呼吸症候群
~夜間発作性心房細動に対してCPAPが有効であった一例~」
というお話をさせて頂きました。
睡眠時無呼吸症候群は様々な心血管イベントの発生に関与していますが、心房細動との関連も非常に深いことが報告されています。
心房細動患者の約50%に睡眠時無呼吸が見られ、重度の睡眠時無呼吸患者では心房細動の発症リスクが約4倍になると言われています。
今回の症例では夜間を中心に終日頻発する上室性期外収縮と夜間に限定した発作性心房細動が認められました。
抗不整脈薬は著効せず、無呼吸の検査を行った所無呼吸低呼吸指数:51回/時と重度の睡眠時無呼吸を認めていました。
無呼吸に対してCPAP治療を開始した所、夜間の不整脈だけでなく、日中の期外収縮もほとんど見られなくなりました。
睡眠時無呼吸は低酸素や高炭酸ガス血症、そして睡眠の質の低下により夜間の交感神経活動が亢進します。
しかし、夜間だけではなく無呼吸が重度な症例では日中の交感神経活動も亢進することが報告されています。
今回の症例も無呼吸により生じた交感神経活動が不整脈の発生に関与していたものと考えられ、CPAP治療により夜間だけでなく、日中の不整脈も改善したものと考えられました。
海外で行われた最近の大規模試験では心血管イベントに対するCPAP治療の有効性に対してnegativeな報告が続いています。
しかし、重要なのは一例一例を深く考察し、有効である症例を見抜く洞察力ではないでしょうか。
そのように対象をしっかりと見極め分類し調査を行えば、CPAPの有効性は必ず示されるだろうと感じています。
青葉区保健活動推進員委嘱式で記念講演をさせて頂きました
院長の山嵜です。
本日令和元年を迎えました。
平成28年7月に当院に勤務を開始いたしましたが、本当にたくさんの皆様に支えて頂き平成を過ごすことが出来ました。
令和になりましても、皆様に信頼して頂けるたちばな台クリニックでいたいと思っております。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
さて、先日4月24日に保健活動推進員の皆様の前で記念講演をさせて頂きました。
保健活動推進員とは各地域における保健活動のリーダー的存在となる皆様の事です。
2年に一度保健活動推進員の委嘱式が開催され、今年も新たな皆様が推進員に任命されました。
これまでに活動されている推進員の方、また新たに任命された推進員の方約200人が青葉区公会堂に参集され、任命式、そしてインストラクションを受けておられました。
その中で今回は
「世のタバコ事情と受動喫煙防止のために保健活動推進員にできること」
というテーマを頂き1時間ほどお話をさせて頂きました。
喫煙が健康に害をもたらすのはもちろん、受動喫煙も大いに健康に被害をもたらします。
受動喫煙のある女性では肺がんのリスクが1.3倍になります。
日本では受動喫煙に関連した死亡者数は年間約1万5千人にも達することが報告されています。
このような事態を重く考え、我が国では望まない受動喫煙をなくすため、
昨年7月 健康増進法の一部を改正する法律が成立致しました。
この改正により多くの屋内施設において原則禁煙となります。
この法律は2020年4月1日より全面施行される予定です。
しかし、実は横浜市ではすでに2010年日本で最も早く受動喫煙防止条例が発令されております。
皆さんも飲食店に足を運ぶと、分煙となっているお店が多い事を良くご存知かと思います。
普段当たり前に目にしている事も、実は日本に先駆けて出来た横浜の誇るべきシステムなのです。
ここ横浜市青葉区の喫煙率は10.9%と日本でもトップを争う喫煙率の低さです(平均17.9%)。
こういった健康志向の高さも青葉区の長寿につながっているのかもしれません。
保健活動推進員の皆様には、是非喫煙および受動喫煙に関する正しい知識を、身近にいる人たちへ是非啓蒙して言って頂きたいと思います。
当院でも地域の皆様の健康に役に立つことがあれば、今後も積極的に活動を続けていきたいと考えております。
頑張れ 日体大FIELDS横浜!
院長の山嵜です。
桜は散りましたがまだまだ寒い日が続きます。
皆さん、体調管理にはくれぐれもお気を付けください。
さて、現在私はなでしこリーグ1部 日体大FIELDS横浜のチームドクターとして、微力ながら選手の皆さんの体調管理に携わらせて頂いております。
4月14日にはニッパツ三ツ沢球技場でなでしこリーグカップ1部第2節が強豪日テレベレーザを相手に開催され、マッチドクターとして会場に足を運んで参りました。
風は強かったですが、心配された雨にも見舞われず、選手たちは互いに大きく声を掛け合い全力でピッチを駆けていました。
結果は残念ながら日テレベレーザに敗れてしまいましたが、きっと次につながる貴重な経験になったことと思います。
今期から新監督の元新たな体制となり、これからのチームがどう盛り上がっていくのかとても楽しみです。
日体大FIELDS横浜HPより
皆さんも是非会場に足を運んで頂き、地元の星「日体大FIELDS横浜」の応援を宜しくお願い致します!
第28回 たちばな台健康教室 ~知っておきたい便秘のすべて~
院長の山嵜です。
今日はたちばな台クリニック 月一回恒例の 健康教室を開催いたしました。
ようやく少し暖かくなり、桜も咲き始めた季節のせいか、それとも「便秘」というタイトルが皆さまのご要望にお応えできたのか、なんと82名の皆様にお集まりいただきました!
これまでに開催致しました健康教室来訪者数最高記録です。本当にありがとうございました。
今回のテーマである「便秘」は大きく2つに分類されます。
1.器質性便秘
: 腫瘍や炎症など大腸に形態的な病的変化を認めるもの
2.機能性便秘
: 大腸の排便機能に何らかの障害が起こり便秘となった状態
まずは器質性便秘でないかどうかの検査が重要です。
検査には大腸がん検診で用いる「便潜血検査」を第一に行います。
便潜血が陽性であれば大腸内視鏡による精密検査を受けて器質的異常がないかどうかを評価して下さい。
さて、器質的な異常が見られない場合には機能性便秘として診療を行っていきます。
この機能性便秘もさらに2つに分類することが出来ます。
❶ 排便回数減少型
: 排便回数や排便量が減少し、糞便が大腸に貯留することで腹部膨満感や腹痛をもたらします。
❷ 排便困難型
: 直腸や肛門の排便機能が低下し、直腸内の糞便を十分に排出できないため残便感を自覚する。
排便困難型の方の中には骨盤底筋群の筋力低下による便秘の方もいらっしゃいます。
そんな方には、椅子に座った姿勢で肛門を閉めるように力を入れる「骨盤底筋トレーニング」が非常に手軽でお勧めです。
聴講にお越し下さった皆さんは、一緒にやって頂きましてありがとうございました。
ぜひご自宅でも続けて頂けたらと思います。
そんな便秘の治療法ですが、まずは生活習慣による改善が第一となります。
食事ではやはり食物繊維が重要になります。
便秘に対しては食物繊維は必要最低限の摂取が望ましいとされています。
男性では20g/日、女性では18g/日が目標と定められておりますが、実際には男女それぞれ14.0g、13.6gと摂取不足であるのが現状です。
この食物繊維には3つの効果があると言われています。
1.食物繊維が便の核となり量を維持することが出来る
2.大腸の蠕動運動を促進し、大腸内に水分を分泌させる胆汁酸を吸着し大腸へ運搬する
3.腸内細菌の栄養となり、大腸粘膜のエネルギー源となる有機酸を産生する
今回食物繊維をたっぷり含むメニューとして当院栄養士の南先生がご紹介したのが・・・
こちら「ごぼうハンバーグ」です。
一食で約6gの食物繊維を摂取することがあります。
レシピをご希望の方はぜひスタッフまでお声かけ下さい。
さて、慢性便秘に対する薬物治療ですが、近年使用できる薬剤の種類が増え、患者様一人一人の症状に適した下剤を選択することが出来るようになりました。
薬物治療
ここでは慢性便秘の薬物治療の基本的スタンスとして
「非刺激性下剤」の定期服用 + 「刺激性下剤」のレスキュー使用
という考え方があることを念頭に置いて頂ければと思います。
「非刺激性下剤」
刺激が少なく、腹痛や耐性を生じにくい下剤
※酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットなど
「刺激性下剤」
腸管の収縮を誘発し、便秘を改善させる下剤
※センノシド、ビサコジル、ピコスルファートナトリウムなど
日本では刺激性下剤が多用されていますが、長期連用により耐性が出現し、難治性便秘になる事がありますので注意が必要です。
薬物治療の詳細に関しましてはまた別の機会にブログで紹介させて頂こうと思います。
もし便秘や現在の薬物治療にお悩みの方がいらっしゃいましたらぜひお気軽にご相談を頂けましたら幸いです。
これからも皆様に役に立つ情報をお届けし続けたいと思いますので、たちばな台健康教室を今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
第10回 たちばな台BLS (Basic Life Support) コース開催!
院長の山嵜です。
3月23日 記念すべき第10回目となるたちばな台BLSコースを開催いたしました。
BLSとは「Basic Life Support」の略で、心肺停止に対する最も基本的な処置を意味します。
具体的には
・倒れている人を発見
・意識の確認~応援要請
・心停止の確認
・胸骨圧迫と換気
・AEDによる電気的除細動
を学びます。
今回はたちばな台病院とたちばな台クリニックの看護師さん、放射線技師さん、ケアマネージャーさんの計10人が受講されました。
2人1組で協力し心肺蘇生を行います。
胸骨圧迫の練習です。これが一番重要です。
皆さん積極的にインストラクターに対して質問をしてくれました。
先輩インストラクターが後輩の指導を温かく見守ります。
約2時間のコースを修了し、筆記テストと実技テストを行い・・・・
皆さん、無事に合格されました! おめでとうございます!
来年度も定期的にコースを開催しスタッフの技術を向上することで、地域の皆様や外来、入院の患者様に貢献していきたいと考えております。
第27回たちばな台健康教室 ~糖尿病は完治できる?~
院長の山嵜です。
少し暖かくなるとともに花粉症の方にはつらい季節になって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
2月の健康教室は糖尿病についてお話をさせて頂きました。
冷たい小雨の降る中70名弱の皆様に参加して頂きました。
本当に有難うございました。
糖尿病の原因には大きく2つあります。
❶ インスリン抵抗性の増大
❷ インスリン分泌低下
過食などにより脂肪細胞が肥大するとアディポネクチンの分泌が低下し、TNF-αなどの炎症を惹起するアディポサイトカインが増加することでインスリンの作用が低下してしまいます。
また日本人は欧米人に比べ人種的にインスリン分泌能が低下していることが知られています。
そのため日本人では欧米人に比べ、軽度のインスリン抵抗性増大により糖尿病を発症してしまう事になります。
今回の講演では、運動療法によるインスリン抵抗性の改善とアディポネクチン分泌の増大効果についてお話させて頂きました。
また管理栄養士の南先生からは地球会食とDASH食をみっくすさせたMind食、そして食物繊維についてお話をして頂きました。
昨年Cell Metabolismに掲載された「DIRECT」試験では肥満を伴う2型糖尿病患者に厳格な食事・運動療法を施行し減量を行ったところ、64例中 29例 (46%) で糖尿病が改善・緩解したことが示されました。
減量により肝臓に含まれる脂肪は16.0%から3.1%に減少。膵臓に含まれる脂肪も減少していました。
糖尿病が緩解した群としなかった群では、食事10分後のインスリン分泌能に有意差があり、緩解群ではインスリン分泌能が改善。
この結果は低下した膵β細胞の機能がリセットされ改善したことを示唆しています。
糖尿病は「一度かかれば、生涯完治することはない」とされていましたが、発症早期より生活習慣を改善することで完治できる可能性があるのだという事を示唆する非常に印象的な報告だと思います。
今回の講演では新しい糖尿病薬についてもお話しする予定でしたが、生活習慣の改善が予想以上に密度の濃い内容になってしまったため薬の話まですることが出来ませんでした。
そちらにつきましてはまたぜひ次の機会に。
それではまた皆様のご参加を心よりお待ちしております。