ご存知ですか? ボツリヌス療法
はじめまして 看護部 師長の川上です。
皆さんはボツリヌス療法をご存知ですか?
食中毒で有名なボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシン(ボトックス)という毒素には筋肉の緊張をやわらげる作用があります。このボトックスを有効成分とする薬を注射する治療法、これがボツリヌス療法です。
ボツリヌス療法の適応症には瞼や顔の痙攣、痙性斜頸、小児脳性麻痺による尖足、そして「手足の痙縮」があります。
当院では手足(上肢・下肢)のこわばり(痙縮)に対してボツリヌス療法を行っています。
ボツリヌス療法の効果としては
・手足の関節が動かしやすくなり、日常生活動作が行いやすくなる
・拘縮(関節が固まってしまう)を予防する
・介護の負担が軽くなる
・痙縮による痛みが緩和される
ことなどが期待できます。
しかし、このボツリヌス療法で大切なことはリハビリテーションです。こわばっている筋肉にボトックスを注射した後は、毎日継続したリハビリテーションが必要となります。固まっている筋肉をゆっくりと伸ばしますので、患者様にも協力していただかなければなりません。
実際に治療前には肩から上肢にかけて強いこわばりがあり肘関節も伸びず、寝衣に袖を通すことも困難であった患者様に対してボツリヌス療法を行いました。ボトックス注射を行い、その後毎日リハビリテーションを継続したところ見違えるように上肢は伸展できるようになりました。ケア中にいつも浮かんでいた患者様の苦痛の表情もやわらぎ、またケアもしやすくなったと現場の全員が効果を実感しました。
もちろん効果の少ない方もいらっしゃいます。また注射の効果は3か月程度のため計画的に治療を継続する必要もあります。
今後もこのような新しい治療法が増えることで患者様の苦痛が減り、安楽な入院生活を提供できればと思い日々看護を行っています。
※ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。