学会・研究会
心房細動と認知症
2月13日(火) 青葉台フォーラムで「Advancing Anticoagulation Care Conference」という研究会が開催されました。
今回は認知症を御専門とされる横浜総合病院の長田先生の御講演の座長を務めさせて頂きました。
「心房細動と認知症 ~高齢者社会における脳梗塞・認知症予防戦略~」というテーマでの御講演です。
皆さんも良くご存知のアルツハイマー病の患者様では脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積していることが知られています。このアミロイドβ蓄積がアルツハイマー病の原因なのか、それとも様々な代謝の結果なのかは議論の分かれるところですが、認知症を全く認めない健常者にもアミロイドβの蓄積が見られることがあるとのことでした。
【アミロイドPET】 左:健常者 右:アルツハイマー病(赤い部分にアミロイド沈着)
それでは同じアミロイドβが蓄積している人でも認知症を発症する人しない人でどのような違いがあるのでしょうか。
その引き金になる原因として生活習慣病(脳心血管疾患の原因)や心房細動の存在が知られています。
(心房細動に関して詳しく知りたい方はこちら↓)
https://tachibanadai-hp.com/clinical/atrial/
生活習慣病に関しては健診で定期的に自分の状態を知り、健康的な食事や定期的な運動に努めることが大切ですね。もちろん発症してしまったらしっかり薬物治療を行いましょう。
また心房細動で問題となるのが、心臓に血栓ができ、その血栓がポーンと血液の流れに乗って頭に飛んでしまい大きな脳梗塞を作ることです。
これを予防する治療が血液をサラサラにする治療「抗凝固療法」です。抗凝固療法をしっかりと行っている患者様では行っていない患者様に比べて認知症の発症が少ないことも報告されています。(European Heart Journal, Volume 39, Issue 6, 7 February 2018, Pages 453–460)
心臓と認知症、一見離れているように見えますが、人間の身体は各臓器が複雑に絡み合い関係のないところはないようです。
まずは健康的な生活を。もし生活習慣病や心房細動での御相談がございましたらいつでもお気軽に御相談ください。
脂肪酸フォーラム in 横浜
2月5日(月)横浜で行われました脂肪酸フォーラムに参加してきました。
岐阜大学から循環器内科 教授 西垣先生をお招きしての研究会です。
私は研究会のopening remarksを務めさせて頂きました。
今回は皆さんも良くご存知のω-3系脂肪酸 EPA(エイコサペンタエン酸)がテーマです。
EPAは主に青魚に多く含まれる脂肪酸で中性脂肪を低下させる効果が良く知られています。
しかしEPAは中性脂肪を低下させるだけでなく、血管の炎症を抑制することで、動脈硬化を予防するという素晴らしい効果を持っているのです。
EPAを用いた有名な日本の臨床試験が「JELIS試験」です。
コレステロールが高い患者さんには通常スタチンというお薬が使用されますが、スタチンを飲んでいる患者さんにさらにEPAを投与したところ心臓の病気の発症率がどうなるかという事を検討した試験です。
結果は下にお示ししますようにEPAを飲んでいると5年間で19%も心筋梗塞や狭心症の発症率が減少しました。
さらに中性脂肪が高く、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが低い患者さんでは、EPA投与によりなんと53%も心血管イベントが減少したのです。
このように有効性が示されているEPAですから巷にはサプリメントがたくさんあふれています。
しかしこのようなサプリメントの中にはEPAの純度が低いものや、高価なものもたくさんあります。
まずは青魚などの摂取を。そしてEPAを摂取する際には純度・安全性の高いものを摂取するようにしてくださいね。
EPAだけでなく脂肪酸につきまして、わからないことがありましたらいつでもお気軽にご質問やご相談下さい。
感染対策研修会に参加してきました
毎日寒い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
本日青葉区医師会館におきまして院内感染対策研修会が開催され、当院から3人が参加いたしました。
今回は『クリニックにおける感染対策の基本』というテーマで、藤が丘病院 感染管理認定看護師の 川野先生からの講義を拝聴いたしました。
はじめに標準予防策(スタンダードプリコーション)、
つまり「手指衛生、個人防護具、針刺し防止、咳エチケット」など感染対策の基本についてお話がありました。
その後は職業感染防止策として針刺し事故・血液暴露に対する対応、また日本ではまだまだ問題として残っている結核感染予防についてのお話を聞かせて頂きました。
当院でも毎月一度多職種が集まり感染対策委員会を開催しております。今回の講義を参考に当院の感染対策に対する意識をさらに向上できればと考えております。
さて皆さんは「衛生的手洗い」という言葉をご存知ですか?
これは医療現場で私たちが日々行っている手洗いの方法です。
❶手のひら ➡ ❷手の甲 ➡ ❸指の間 ➡ ❹親指 ➡❺爪 ➡ ❻手首
の順序で洗い残しの無いように洗っていきます。
12月に入り、インフルエンザや胃腸炎など感染症が気になる季節になりました。
皆様もぜひ「衛生的手洗い」を行って感染予防につとめてください。
糖尿病 低糖質の効果は?
管理栄養士の南です。
10月14日、21日に糖尿病の研修会に参加してきました。
現在日本人の糖尿病患者数は1000万人、6人に1人が糖尿病に罹患しています。
30年前は100人に1人でしたので、急激に患者数が増えている現状です。
糖尿病治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱で行います。
血液検査で血糖コントロールを定期的に評価していきますので、検査の結果が毎回気になるところではあると思いますが、治療の目標は
「健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、健康な人と変わらない寿命の確保」
(糖尿病治療ガイド2016-2017より)です。
私は、食事療法を主に担当しておりますが、苦しいだけの食事療法では生活の質の維持という目標は達成できませんので、これならできそう!と思える改善案を患者様と一緒に考えていくことを心掛けています。
さて、研修では糖質制限の是非についてのお話がありました。
結論からいうと、糖質制限に効果なし!というのが現時点での見解のようです。
糖質を控えることは、「低糖質」「糖質制限」「ロカボ」などといった言葉が使われ、テレビや雑誌などで取り上げられることも多くありますね。
定義はそれぞれ違うようですが、「ロカボ」について調べてみると1食の糖質を20~40gにすることを意味するようです。1日1600kcalとするとエネルギー比の15~30%ということになりますが、これは糖尿病治療ガイドライン(50~60%)の半分以下です。
日本人は平均して摂取エネルギーの60%を糖質から摂取していますので、主食を1/3~1/2に減らすということになりますね。もともと必要以上に摂取している方にとって、それくらいがちょうどよい場合も確かにありますが、適量摂取している方にとっては、糖質を控えることは摂取エネルギー不足、虚弱(フレイル)につながってしまう危険性もあります。
今回の研修で、改めて糖質制限について整理することができました。ガイドラインだから…ではなく、根拠をきちんと説明し、皆様の疑問が少しでも解消できるよう学んでいきたいです。
青葉区医師会 循環器研修会
少し前の話になりますが、9月13日(水)に青葉区医師会館で青葉区循環器研修会が開催されました。
今回は「心疾患のトータルマネージメント」をテーマに、たちばな台病院 副院長・心臓血管センター長の太田先生と私で現在のたちばな台病院・クリニックで行っている最新の治療についてお話をさせて頂きました。
太田先生は『たちばな台病院での冠動脈インターベンション~その特色と地域連携の重要性~』、私は『どこまで治せる? 当院における心房細動アブレーション~治療適応から術後管理まで~』というタイトルで講演いたしました。
冠動脈インターベンションというのは、動脈硬化により狭くなったり閉塞したりした心臓の血管(冠動脈)を、手首や太ももの付け根から挿入したカテーテルを用いて治療するカテーテル手術のことです。1977年にスイスのAndreas Gruentzigが世界で初めて冠動脈に対するバルーン拡張術を施行し約40年になります。その後1986年にはステントという金属のコイルを血管内に留置し血管を拡張させる画期的な方法が開発され、2002年には現在もステント治療の主流として使用されている薬剤溶出性ステントが登場しました。
薬剤溶出性ステントにより再狭窄率を劇的に減少させることが出来ましたが、ステントは異物であるため血栓症という危険性がつきまとうこと、またあくまでもコレステロールが蓄積されて生じた動脈硬化を押しのける治療であることなどが問題となります。そこで、現在太田先生が力を入れているのがDCA(Directional Coronary Atherectomy:方向性冠動脈粥腫切除術)という方法です。
DCAとは先端の片側半分にカッターのついたカテーテルを狭窄部まで進めていき、カッターを回転させることで動脈硬化を削り取ってしまう治療方法です。当然非常に熟練した技術が要求されますが、成功すれば動脈硬化を体外に除去することが出来るという事になります。治療可能な部位は限られてきますが、ステントを用いずに良好な拡張を得ることもできることから、非常に期待される治療法です。
胸の痛みがある、狭心症と診断されている、ステント治療を受けたことがある、もし最新の冠動脈インターベンションにご興味がある方はぜひ当院までお気軽にご相談ください。
※私の講演の内容に関連した話は9月28日に行いました健康教室のブログでお届けいたします。
摂食嚥下リハビリテーション学会
管理栄養士の南です。
9月15~16日 千葉県の幕張メッセで行われた日本摂食嚥下リハビリテーション学会に参加してきました。
全国から多職種が集まり、それぞれの専門領域の発表や講演を聞き、今後の業務に活かせそうなヒントを持ち帰ってきました。
なかでも心に響いたのが「食べる事は活きる事」とお話しされている先生の言葉です。摂食嚥下を考える際は、口腔の機能に意識が集中しがちですが、「食べる」ことについて様々な視点から考えていくことの大切さについて改めて考えることができました。
かむ力や飲み込む力が弱くなり食べる機能が低下すると、食事摂取量が不足したり、誤嚥(ごえん:食べ物が食道ではなく気管にはいってしまうこと)等の問題が発生しやすくなります。
また、虚弱(フレイル:筋肉量の減少等全身状態の低下)になると、咀嚼嚥下(そしゃくえんげ)機能低下のリスクが上昇するといわれています。
当院でも、この咀嚼嚥下に問題を抱える入院患者様が多くいらっしゃいます。
週に一度、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・管理栄養士で入院患者様の治療内容等についてカンファレンスを行っていますが、その中でも咀嚼嚥下については頻繁に協議される項目です。
私は管理栄養士として、咀嚼力(かむ力)や嚥下力(飲み込む力)など機能だけでなく、嗜好や生活状況などにも配慮し、患者様やご家族の想いに寄り添えるよう関わっていきたいと考えます。
今回は院内を代表して参加させていただきましたが、学んだことをしっかり伝達し、スタッフ一同チーム医療で様々な視点から「摂食嚥下」について取り組んでいきたいと思います。