第48回たちばな台健康教室を開催しました 〜健康寿命を延ばすために今できること〜
院長の山嵜です。
9月24日(木)、第48回たちばな台健康教室を開催いたしました。
なんと118名もの地域の皆さまにお越しいただきました!
ここのところ雨の日が続いていましたが、当日は皆様の熱意で貴重な晴れ間むしろ暑いくらいのお天気となり、良いコンディションの中でお話しさせていただくことができました。
ご参加いただきました皆さま、本当にありがとうございました。



今回のテーマは「健康寿命を延ばすために今できること」。当院からははじめに私から、続けてたちばな台病院の栗田正幸先生(総合診療科)が「人生の最終段階で知っておきたいこと」、言語聴覚士の茂木真千子先生が「最期まで『食べる』を支えるために」というテーマでお話しをさせて頂きました。
このブログでは、私が担当した第一部の内容をご紹介します。
健康寿命とは
「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。ただ長生きするだけでなく、元気に自分らしく過ごせる期間をいかに延ばすか、というのが今回のテーマの核心です。
◉ 日本人の平均寿命、最新データ
2026年7月24日に発表された令和7年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は
- 女性 87.33年(前年より+0.20歳)
- 男性 81.35年(前年より+0.25歳)
女性は41年連続で世界1位、男性は7位という結果でした。
◉ 何が原因で亡くなるのか
生まれた時点で推定される「将来どの死因で亡くなるか」の確率を見ると、がん・心疾患・脳血管疾患が主要な死因です。2024年のデータでは、がんによる死亡者数は年間約38.4万人、心疾患・脳血管疾患は合わせて年間約32.9万人にのぼります。その他の死因としては、誤嚥性肺炎、不慮の事故、腎不全、アルツハイマー病、血管性認知症なども上位に入ります。
興味深いのは、もし悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患という3大死因を除去できたとすると、女性は4.77年、男性は5.84年、寿命が延びると試算されている点です。つまり、この3つの病気を防ぐことが、健康寿命を延ばす大きな鍵になります。
◉ がんを防ぐための「5+1」の習慣

科学的根拠に基づくがん予防としては、次の6つのポイントをお伝えしました。
- たばこを吸わない(受動喫煙も含めて避ける)
- お酒はほどほどに
- 食生活(塩分を控え、野菜をしっかり摂る)
- 身体活動を維持する
- 適正体重を保つ(BMI 21〜25程度)
- +1 感染対策(B型・C型肝炎ウイルスなど、感染が原因となるがんへの対策)
喫煙は頭頸部・食道・胃・肺・乳房・肝臓・大腸・子宮頸がんなど多くのがんのリスクを高め、全体で1.5倍、肺がんに限れば3〜4倍にもなります。一方で20年間禁煙を続けると、非喫煙者とほぼ同等までリスクが下がることも分かっています。
◉ 高血圧は脳心血管死亡の最大のリスク

2019年の脳心血管病死亡に関する疫学データの試算では、LDLコレステロールや高血糖、喫煙を抑えて高血圧が最大の危険因子であることが示されています。年間約17万人が高血圧が原因で命を落としているという推計です。
高齢の高血圧患者を対象とした中国の大規模臨床試験「STEP試験」では、厳格な降圧治療によって心不全が73%、脳卒中が33%、急性冠症候群が33%減少し、全体として心血管イベントのリスクが26%低下することが示されました。高齢者であっても、忍容性があれば厳格な降圧治療が有効であるという結果です。
こうした知見を踏まえ、2025年8月に刊行された最新の高血圧管理・治療ガイドライン(JSH2025)では、年齢・性別・合併症の有無にかかわらず、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満という降圧目標に統一されました。あわせて日本高血圧学会からは「早朝高血圧徹底制圧宣言2025」も発表され、早朝の家庭血圧が循環器疾患と強く関連することから、家庭血圧測定の習慣化が呼びかけられています。「測ろう!下げよう!!あなたのリスク!!!」というスローガンも印象的です。
◉ 平均寿命と健康寿命の差を縮める「U.E.N.O. Plan」

平均寿命と健康寿命の間には、日常生活に制限が生じる期間が存在します。この差を縮めるための国の取り組みが「U.E.N.O. Plan(攻めの予防医療)」で、次の6つの重点領域が掲げられています。
- 歯科保健(国民皆歯科健診の具体化)
- がん・循環器病等の早期発見
- 認知症対策
- リハビリテーション
- 栄養・食生活(わが国初の「食事ガイド」)
- 性差に由来するヘルスケア(更年期世代の女性の健康)
◉ 認知症と軽度認知障害(MCI)
認知症とは、さまざまな脳の病気によって神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶や判断力などの認知機能が低下して社会生活に支障をきたした状態を指します。その手前の段階である**軽度認知障害(MCI)**は、認知機能の低下はあるものの、日常生活に支障をきたすほどではない状態です。
厚生労働省の研究班が2024年5月に公表したデータでは、認知症の方が約443万人、MCIの方が約558万人と推計されています。
◉ 介入可能な14の認知症リスク因子

2024年のLancet誌の報告では、介入可能な14のリスク因子への対策により、認知症のリスクを約45%低下できる可能性があるとされています。難聴、高LDLコレステロール血症、教育不足、社会的接触の欠如、うつ病、頭部外傷、大気汚染、喫煙、糖尿病、身体活動の欠如、高血圧、視力低下、肥満、過度の飲酒がそれにあたります。
中でも「難聴」は認知症につながる3つのメカニズム(社会的孤立、認知負荷の増大、脳の構造変化)が指摘されており、補聴器の使用によって認知機能の低下が緩やかになる可能性を示すデータも紹介しました。また、高LDLコレステロール血症は血管や脳を目に見えないところで蝕んでいくこと、そして帯状疱疹の不活化ワクチン(シングリックス)接種によって認知症リスクが低下する可能性を示す研究についてもお話ししました。
◉ 健康寿命を延ばす3つの「守る」
最後に、今日からできることとして「健康寿命を延ばす3つの守る」をお伝えしました。
- 血圧を守る
- 聞こえとつながりを守る
- 早期発見を守る
すべてを一度に完璧にやろうとする必要はありません。ひとつでも出来ることから始めてみてください!
次回、第49回たちばな台健康教室は2026年12月17日(木)、「あなたのその健康法、本当に正しいですか?〜総合内科専門医がエビデンスで答える〜」をテーマに開催予定です(参加無料・予約不要)。ぜひまたお越しください。






